カワウソは、テレビなどのメディアで取り上げられることが多く、モフモフしていて可愛い仕草や表情などから、人気が高い動物です。
カワウソの特徴や生態、種類などについて紹介します。
特徴
正式名称 | カワウソ |
英語名 | Otter |
分類 | ネコ目(食肉目) イタチ科 |
生息地 | 世界全域の水辺 (南極、オーストラリア、ニュージーランドを除く) |
体長 | 40cm~140cm (種類により異なる) |
体重 | 3~40kg (種類により異なる) |
性格 | 好奇心旺盛、賢い、人懐こい |
その他の特徴 | 寿命は、野生下では8~10年、飼育下では15年ほど 天敵はワニ、ヘビ、ジャガーなど |
チャームポイント | 丸い顔、大きな目 |

生態
野性のカワウソは、一部地域を除いた世界中の河川や湖沼、海岸などのエサとなる生物が豊富にいる水辺に生息しています。
カワウソは、陸でも活動しますが、泳ぎが得意で水中で過ごすことが多く、エサを求めて川や海などに潜ります。
カワウソの生態について紹介します。
身体的特徴
カワウソは、胴長で四肢は短く、水かきがあり(一部の種類は、部分的にしかない)、尾が太くて長く、素早くスムーズに泳ぐのに適した流線形の体型をしている。
太くて長い尾は体とほぼ同じ長さで、水中や陸上でバランスを取る際に役立ち、泳ぐ際に舵の役割を果たす。
カワウソは時速12kmで泳ぎ、水中では餌を探すまで3~5分間息を止めることができる。
前足で器用に物をつかめるため、水中で魚をつかみ取ったり、岸辺や岩場まで捕らえた獲物を持ち運んだりすることができる。また、石を使って貝を割ることもある。
長いヒゲは獲物を探すためのセンサーのような役割をもつ。
優れた視覚や嗅覚をもち、水中でも獲物や仲間などの存在を感知できる。

モフモフした被毛
カワウソの被毛は、長めの毛で水を弾くオーバーコートと、柔らかくて短い毛が密集したアンダーコートの2層構造で、保温性に優れていたり、浮力を高めたりする効果があり、氷で覆われた湖など、冷たい水中でも問題なく魚を捕ることができる。
カワウソは、水中にいても、撥水性のあるオーバーコートと密生したアンダーコートにより、皮膚が濡れることはなく、防水性にも優れている。
カワウソは、陸地や水中で過ごすために、それぞれの環境に適応した被毛を持つことで体温を維持することができる。
食性
カワウソには盲腸がなく、腸管も体に比較すると短いため、食物を数時間で消化してしまう。そのため、頻繁にエサを捕食して1日に摂取するエサの量は非常に多い。
カワウソが1日に食べるエサの量は、体重の約1~2割といわれていて、水中で活動することが多いカワウソには、大量のエネルギーが必要になる。
食性は多様で、基本的には魚やザリガニ、エビといった甲殻類、両生類や貝類などが主食であるが、小動物や昆虫を食べることもある。
カワウソの歯は、貝を殻ごと噛み砕いて食べられるほど丈夫で、魚などは骨まで砕いて食べる。

小さな耳
カワウソの耳は小さくて、目の位置と同じ高さにある。
カワウソの目と鼻と耳は同一線上に並んでいて、水中にいても、これらの器官を水面上に出して周囲の様子を伺えるため、外敵から身を守ることができる。
水中で耳や鼻の穴を閉じて、水が入るのを防ぐこともできる。

遊ぶことが大好き
カワウソは、知能が高く好奇心旺盛な動物であるため、遊ぶことが大好きで、水中を泳ぎ回ったり、仲間とじゃれ合ったり、石などを前足で掴んで投げたりして遊ぶ。
カワウソは、遊びから仲間との絆を育むことや、獲物の狩り方など、生き抜く方法を学んでいく。また、遊ぶことがストレス解消にもなっている。

子育て
カワウソの妊娠期間は約60日で、1度に数頭の赤ちゃんカワウソを出産する。
生まれたての赤ちゃんカワウソは、目が開いておらず、自力で動くことができないため、母カワウソが口にくわえたり、手で抱えたりして移動させる。
赤ちゃんカワウソは、生後1ヵ月ほどで目が開くようになり、その後母カワウソから泳ぎ方の特訓を受けて、生後3か月頃には泳げるようになる。
泳ぎ方を教える際に、母カワウソは半ば強引に赤ちゃんカワウソを水中に入れるが、泳ぐ事はエサを捕るために必要な生きる術であるため、真剣に教育する姿の現れのようにみえる。
子育ては主に母カワウソが行うが、巣作りや狩りは、父カワウソが行うこともある。
種類
カワウソは、13種類に分けられています。
それぞれの種類について紹介します。
①~⑤は、日本の動物園や水族館などで見ることが出来る種類です。
① コツメカワウソ
東南アジア、インド、中国南部の標高2,000mほどの範囲にある、湿地や湖沼、水田などに10~15頭ほどの群れを作って生息している。
体長は40~60cm、体重は3~6kg。
被毛は背中側が灰褐色、薄黒褐色、腹側は白色、灰白色。
爪が短くて小さいことが、名前の由来。指先が器用で、物を上手につかむことが出来る。
四肢には小さな水かきがあり、泳ぐことが得意。
カワウソの中で、体が最も小さく、15~20頭ほどの群れで行動する。
基本的には夜行性だが、飼育下では昼間も活発に動くことが多い。
仲間とコミュニケーションをとる際に、12種類以上ある鳴き声を使い分けている。
日本では、動物園や水族館で、最も多く飼育されている種類。
国内のメディアで取り上げられる機会が多く、その可愛らしい姿が人気になり、ペットとしての需要が高まり密輸が増えたため、深刻な問題になっている。


② ユーラシアカワウソ
ユーラシア大陸の海岸付近や淡水域に生息していて、カワウソの中で最も広い地域に分布している。
体長は80~100cm、体重は5~12kg。
被毛は背中側が黒褐色、灰褐色、腹側は淡黄色、灰白色。
四肢が短く、大きな水かきと鋭い爪をもつ。
単独で行動する。夜行性。
別名は、「ヨーロッパカワウソ」と呼ばれている。

③ ツメナシカワウソ
アフリカ南部に生息している。
体長は70~100cm、体重は15~20kg。
被毛は背中側が茶褐色、濃褐色、腹側は白色、クリーム色。口元や頬、喉、胸部にかけては明るい色が目立つ。
前足の指に爪が無いことが名前の由来。
単独で行動する。夜行性。

④ カナダカワウソ
北米大陸の湖や河川流域、湾になった海辺などに生息している。
体長は60~90cm、体重は6~8kg。
被毛は黒褐色、灰褐色など。
水かきがあり、泳ぐことが得意。
主に単独で行動する。夜行性。
⑤ ラッコ
北太平洋に生息している。
カワウソの中では珍しく、海洋に進出して生涯のほとんどを水中で生活する。
体長は100~140cm、体重は20~40kg。
被毛は黒褐色、濃褐色。昼行性。
ラッコの詳細については、ラッコの特徴と生息地をご覧ください。

⑥ オオカワウソ
南米に生息している。
体長は85〜140cm、体重は25〜35kg。
被毛は濃いこげ茶色、黒褐色。上唇から顎や喉、胸にかけてクリーム色や白色の斑が入ることが多い。
カワウソの中では最大種。
水かきとカギ爪が発達している。
群れで行動する。昼行性。
ピラニアやワニといった、凶暴な動物を捕食することから、「川のオオカミ」とも呼ばれている。
⑦ オナガカワウソ
メキシコ、アルゼンチンに生息している。
体長は50〜80cm、体重は7〜15kg。
被毛は濃褐色、灰褐色、腹側は背中側よりもやや淡い色。
名前の通り、尾が長いのが特徴。
主に単独で行動する。夜行性。
⑧ ミナミウミカワウソ
チリ、ペルー、アルゼンチンの沿岸に生息している。
体長は50〜60cm、体重は3〜6kg。
被毛は、背中側が濃褐色、お腹側は淡黄褐色、灰褐色。
カワウソの中では、ラッコと同様に海水に適応している珍しい種類。
単独または、最大3頭ほどの群れで行動する。昼行性。
⑨ チリカワウソ
チリとアルゼンチン南部に生息している。
体長は57〜70cm、体重は5〜10kg。
被毛は、背中側が濃褐色、お腹側は黄赤色、淡褐色。
主に単独で行動する。夜行性。
⑩ ノドブチカワウソ
アフリカ大陸全域に生息している。
体長は58〜70cm、体重は3〜6.5kg。
被毛は背中側は赤褐色、濃褐色、腹側は淡黄褐色、橙色。
名前の通り、喉から胸にかけてクリーム色や白色の斑が入るのが特徴。
主に単独で行動する。昼行性。
⑪ スマトラカワウソ
東南アジアに生息している。
体長は50〜80cm、体重は3〜6.5kg。
被毛は赤褐色、濃褐色、腹側は背中側よりもやや淡い色。
主に単独で行動するが、3〜4頭ほどの群れで狩りをすることもある。夜行性。
⑫ コンゴツメナシカワウソ(ザイールツメナシカワウソ)
アフリカ中部、西部の河川、湿地、マングローブ林などに生息している。
生態に関する情報が少なく、「幻のカワウソ」とも呼ばれていて、今後の研究が期待されている。
分類上は、ツメナシカワウソの亜種とする説と、独立した種とする説の両方があり、現在も研究者の間で議論されている。
体長は70〜95cm、体重は10〜15kg。
被毛は背中側は濃褐色、黒褐色、腹側は背中側よりもやや淡い色。
名前の通り、前足に爪がない。
主に単独で行動する。夜行性。
⑬ ビロードカワウソ
アジアから東南アジアの平地の水辺に生息している。
体長は65~75cm、体重は7~11kg。
被毛は背中側はこげ茶色、薄い黒色、腹側は淡黄褐色、灰褐色。
名前のとおり、ビロードのように滑らかで光沢のある、短い被毛が特徴。
群れで行動する。夜行性。
かつて日本に生息していた種類
かつて、「ニホンカワウソ」という種類が、北海道から九州まで広く生息していたが、1979年に高知県で最後の個体が確認されて以降、公式には確認されておらず、2012年に環境省により絶滅種に指定された。
体長は90〜130cm、体重は5〜12kgほど。良質な被毛を持っていた。
ユーラシアカワウソの亜種ともいわれているが、詳細については不明。
以前は日本全域に生息していた、ニホンカワウソが激減していった原因は、明治時代以降に行われていた毛皮目的の乱獲や、1960年代以降の高度成長期に行われた護岸工事や森林伐採による生息地の減少、河川への汚染水の流出などによるエサとなる魚介類の減少、などがあげられる。
絶滅の危機
13種類いるカワウソのうち、ほとんどの種類が、現在「レッドリスト(国際自然保護連合(IUCN)が作成している絶滅危惧種のリスト)」に登録されており、絶滅の危機に瀕しています。
原因は、環境汚染や毛皮やペットにする目的の乱獲、漁業被害による害獣としての駆除、などがあげられます。カワウソにとって最大の天敵は、人間なのかもしれません。
2019年に「ワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動物の保護を目的とした、野生動物を輸出入する国々の国際取引が過度に行われないように規制した条約)」で、規制が最も厳しい「附属書Ⅰ」に掲載されたため、国際的な取引は禁止されています。
現在、世界中で様々な団体により、カワウソを守るための環境保全活動が続けられています。

現存するカワウソ達が、前項で取り上げたニホンカワウソと同じ運命をたどらないよう、私達が環境に配慮した行動を心がけていくことが重要です。

カワウソは、見た目の可愛らしさから人気がありますが、現在カワウソの置かれている状況や、その生態などから、ペットとして飼うことは大変難しい動物です。
カワウソに会いたくなったら、生育環境がしっかりと管理されている動物園や水族館などに出かけて、可愛らしい姿を気軽に楽しんでみるのはいかがでしょうか。