トラは、縞模様に特徴があり、日本では動物園で見ることができて、干支やとんち話、ことわざなどに登場するなど、古くから親しみのある動物として知られています。
トラの生態や種類、意外な秘密について紹介します。
特徴
正式名称 | トラ |
英語名 | Tiger |
分類 | 食肉目 ネコ科 |
生息地 | インド、東南アジア、中国、ロシア東北部など |
体長 | 140~230cm |
体重 | 65~310kg(亜種1によって違いがある) |
性格 | 優しい、マイペース、子煩悩(特に母トラ)、神経質 |
その他の特徴 | ネコ科最大の動物 雄のほうが雌よりも体が大きい傾向がある 耳の裏には「虎耳状斑(こじじょうはん)2」と呼ばれる白斑がある 天敵は人間 |
チャームポイント | 大きな体でネコと同じ仕草をする |

生態
トラは3~5歳で成獣になり、寿命は、野生下では約15年、飼育下で20~25年といわれています。
基本的に夜行性ですが、昼間も活動します。
トラの生態について紹介します。
縄張り
トラは、繁殖期と育児期以外は基本的に単独行動を好み、縄張り意識が強い傾向がある。
雄は、藪や木々が生い茂る密林に、約100平方キロメートル以上の広大な縄張りを持ち、その中で狩りを行い生活している。
雌も獲物が多くて子育てがしやすい、比較的狭い範囲の縄張りを持っている。
雄は、自分の縄張りを複数の雌の縄張りと重複させて、繁殖する機会を得ている。
縄張りは、獲物が多い地域は狭い範囲になり、少ない地域は広大になる。
トラは、縄張りを定期的に巡回して、尿や爪痕でマーキングを行い、他のトラに自分の縄張りであることを知らせる。
縄張りに他のトラが侵入した際は、縄張り争いになることがあるが、特に雄同志の争いは激しく、命を落とすこともある。
子育て
雌は、約100日の妊娠期間を経て1度に3~4頭ほどを出産する。子育ては雌が単独で行い、雄はほとんど関わらない。
生まれたての赤ちゃんトラは目が見えず、体重が1kg程度で、生後2週間ほど経つと目が開く。
授乳期間は3~6カ月間ほど。
子トラは、生後1年半~2年頃まで母トラからエサを貰い、狩りの仕方や危険回避の方法などを教わり、やがて自分の縄張りを求めて独り立ちしていく。母トラは、子トラが独り立ちできるようになるまで、様々な生きる術を教えて献身的に面倒をみる。
生存競争が激しく、2歳になるまでにおよそ半数が命を落としてしまうといわれている。

特徴的な縞模様
トラは縞模様が特徴的であるが、その模様は個体ごとに異なり、同じ模様をもつトラはいない。
縞模様があることで、生息地の森林に溶け込みやすい保護色となり、狩りをする際に獲物に気付かれにくいという利点がある。
トラは、時速60km前後(最高速度は約80km)で走ることができるが、持久力がないため長距離の走行はできないので、茂みに紛れ込んで待ち伏せをしたり、風下から忍び寄ったりして、獲物との距離を充分に縮めてから一気に飛び掛かかり、喉に噛み付く、または前足で強力な一撃を与えるといった方法で狩りを行う。
保護色となる縞模様は、トラが狩りを行う際に重要な役割を果たしている。

食性
「密林の王者」といわれるトラは肉食で、生息地における「頂点捕食者」であり、生態系の頂点に君臨している。
野性下ではスイギュウやイノシシ、シカなど大型の草食動物が主食だが、ワニやヘビ、鳥や魚、昆虫など、あらゆる生物を捕食する。時にはゾウやサイなども襲うといわれている。また、人里に近い地域に生息しているトラは、家畜を襲うこともある。
飼育下では、ウシやウマ、ニワトリなどを食べる。
狩りの成功率は低く、10回に1回程度といわれている。大型動物を捕らえた時は、その場にしばらく留まり、時間をかけてしっかり食べて栄養を充分に摂る。
種類
トラは、生息地により9亜種に分類されていますが、そのうちの3亜種は既に絶滅しています。
それぞれの亜種について紹介します。
アムールトラ(シベリアトラ)
生息地は、ロシアのアムール川流域。
体長は170~230cm、体重は100〜310kg。
被毛は、寒い地域に生息しているため、厚くて長い。
冬毛は赤みがかった黄色で、夏毛はより赤みが強くなる。
トラの中で最大の種類。

ベンガルトラ
生息地は、インド、ネパール、バングラデシュ。
体長は160~220cm、体重は100~260kg。
最も個体数が多いといわれている。
被毛はオレンジ色、褐色で短い。縞は他の亜種より少ない。

スマトラトラ
生息地は、インドネシアのスマトラ島。
体長は160~190cm、体重は75〜140kg。
頬の毛が長く、縞模様の間隔が狭い。
現存するトラの中で最小の種類。

インドシナトラ
生息地は、インドシナ半島。
体長は160~200cm、体重は100〜195kg。
縞は太くて数が少ない。
ベンガルトラよりも小型の種類。
マレートラ
生息地は、マレー半島。
体長は160~200cm、体重は100〜195kg。
インドシナトラと同じくらいの大きさ。
アモイトラ
生息地は、中国南部。
体長は170~210cm、体重は100~175cm。
被毛は赤みがかった黄土色。縞は幅が広くて短い。
現在、野生では絶滅した可能性が高いと考えられていて、世界中の動物園などで飼育されている個体のみとされている。
絶滅した3亜種
上記の亜種以外にも、バリトラ、ジャワトラ、カスピトラがいたが、いずれも絶滅している。
バリトラ
インドネシアのバリ島に生息していた。
体長は140~175cm、体重は65〜100kg。
かつてはトラの中で最小と言われていたが、1940年代に絶滅。
ジャワトラ
インドネシアのジャワ島に生息していた。
体長は160~190cm、体重は75〜140kg。
縞模様が細く、他の亜種よりも足が大きい。
スマトラトラと同じくらいの大きさといわれていたが、1980年代に絶滅。
カスピトラ
中央アジア地域、カスピ海沿岸周辺部に生息していた。
体長は170~210cm、体重は100~240kg。
以前、ヨーロッパでトラとして知られていたのは、この種類。
ベンガルトラより小型で、縞模様の間隔が狭い。1970年代に絶滅。
その他
動物園で人気のホワイトタイガーは、ベンガルトラの白変種(色素の減少によって体毛や皮膚が白色の種類)で、生まれてくることが稀な珍しいトラ。
アルビノ(メラニンが欠乏する遺伝子疾患で白色になる症状)とは異なる。
白変種は、以前は突然変異により誕生したといわれていたが、現在は、かつて氷河期の氷や雪に覆われていた環境で保護色として白色の被毛を持っていた個体の遺伝子が、現在まで残っているのではないかと考えられている。
ホワイトタイガーの被毛は白色、クリーム色で、縞模様は茶色、黒色など。
目は青色(アイスブルー)で、鼻先や肉球はピンク色。
生態については、ベンガルトラとほぼ同じ。



意外な秘密
泳ぎが得意
一般的にネコ科動物は水を避ける傾向があるが、トラは、ネコ科動物の中では珍しく水泳が得意で、必要に応じて幅が数kmほどある川を泳いで渡ることもある。
暑い地域では、水浴びで体温調整をして、熱中症や脱水症状になるのを防いでいる。
獲物を追って水中に入ったり、水中にしばらく滞在して、水場にくる動物を待ち伏せたりすることもある。

絶滅の危機
トラは、20世紀初頭には10万頭ほど生息していたといわれていましたが、現在は約4,000頭前後と推定されています。
トラの生息数が激減した主な原因は、かつては毛皮や部屋の装飾品として利用するため、または娯楽のための狩猟によるものでしたが、現在は、木材伐採や農地への転換などに起因する森林破壊による生息地の減少や分断、漢方薬の材料として利用するための密猟などがあげられます。
トラには既に絶滅した亜種がありますが、現存する亜種も全て、現在「レッドリスト(国際自然保護連合(IUCN)が作成している絶滅危惧種のリスト)」に登録されており、絶滅の危機に瀕しています。
「頂点捕食者」であるトラが減少すると、それまで生息地で捕食されていた草食動物が増え過ぎて、エサである草や若木などが食べ尽くされて森が荒廃していき、そこにいた小型哺乳類や鳥類など他の生物達の生息地が失われたり、植物が減少して食料不足を引き起こしたりして、食物連鎖のバランスが崩れて生態系に深刻な影響を与えます。

現在、国際的な保護行動が行われており、主にインド、ネパール、ブータン、ロシアの一部地域では、トラの個体数の回復傾向がみられますが、森林破壊や密猟の脅威が続く限り、トラを取り巻く状況は依然として厳しく、保護活動を継続していく必要があります。

トラは、捕食者の頂点に立つほどの強い存在ですが、絶滅の危機に直面していて、厳しい環境の中で生きていくことを余儀なくされています。
トラの危機は地球の危機と捉えて、この状況を変えていくために、みんなで少しでも環境に配慮した行動を心がけていきたいですね。