ヒガンバナの種類や不思議な生態を探る

higanbana 花図鑑
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ヒガンバナは、秋のお彼岸が近づくと、神社仏閣や土手、田畑の畔などに群生して、一斉に真っ赤な花を咲かせます。

ヒガンバナの花言葉や種類、その生態について紹介します。

特徴

科名/属名ヒガンバナ科 ヒガンバナ属
英語名Red spider lily
Hurricane lily
生育サイクル年草
開花期9月
赤、白、黄、青、紫、オレンジ、ピンク、複色
原産地日本、中国
おすすめの環境日当たりと水はけの良い場所
その他の特徴開花する適温は、約20~25℃
全草(、茎、葉、球根)に「リコリンなど、アルカロイド系の有害物質が含まれている
特に「鱗茎(りんけい)1」と呼ばれる球根の部分は毒性が強いため、取り扱いには注意が必要
古くは救荒植物2として利用されていた
別名は、「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」、「リコリス」などと呼ばれている
(他にも1000個以上の別名がある)
栽培のコツ庭植えは、降雨にまかせて、特に水やりの必要はない
鉢植えは、土の表面が乾燥して、数日ほどしてから水やりをする
多湿が苦手なため、いずれの場合もやや乾燥気味に育てたほうがよい

花言葉

全体の花言葉と花の色ごとの花言葉があります。

全体情熱、悲しい思い出、諦め、独立
情熱、悲しい思い出、諦め、独立、再会
想うはあなた一人、また会う日を楽しみに
追想、深い思いやり、陽気、元気
ピンク快い楽しさ、あなたのためなら何でもします
オレンジ妖艶

不思議な生態

ヒガンバナは、「葉見ず花見ず」とも呼ばれていて、花のあるときに葉はなく、葉のあるときに花はない、花と葉が同時に存在することがない不思議な生態をもっています。

①生長サイクル

< ヒガンバナの生長サイクルについて >

時期生長過程
9月頃開花
約1週間ほど咲いて、花が散る
10月頃花後に濃緑色で線形の葉を生やす
冬~翌年春頃光合成で球根に栄養を蓄え続ける
4月頃葉が枯れる
5~8月頃休眠する
地上では何も見られないが、地下では球根が開花に向けて花芽を発達させている
9月頃花芽を伸ばして、再び開花
葉を生やさずに咲く、ヒガンバナの花
ヒガンバナの花後に生える葉

ヒガンバナが冬に葉を茂らせるのは、他の植物が枯れて高い草が少なくなる時期に、効率良く光合成を行うことが出来るという、ヒガンバナ特有の生存戦略の一つになっている。

②3倍体の植物

日本で咲くヒガンバナは、3倍体の植物であるため、基本的に種子が出来ないといわれている。

通常の植物は、染色体を2セット持つ「2倍体」であるが、ヒガンバナの場合は「3倍体」で、染色体を3セット持つため、特別な性質をもっている。

3倍体の植物には以下のような特徴がある。

  • 種子ができにくい(不稔性) ← 3は奇数なので、減数分裂3が正常に行われず、正常な配偶子4ができないため
  • 球根や地下茎などから栄養生殖5によって増殖する
  • 花は咲くが、結実しない
  • 種ができないという性質を逆手にとり、食べやすい果実など、人為的に作られることがある(種なしスイカ、バナナなど)

ヒガンバナは、地中にある球根が分裂して新たな個体を作る(分球する)ことで、繁殖している(無性生殖6)。

種子をつくらないとされるヒガンバナの中でも、ごく稀に結実して種子を作る個体もあるため、全く種子が出来ないとは言い切れないようである。

中国では、種子を作る2倍体のヒガンバナが確認されている。

③有害物質を活かす

ヒガンバナは、昔から田畑の畔や墓地などで見かけることが多かったが、ヒガンバナがもつ有害物質のアルカロイドによって、ネズミやモグラ、虫などの動物による農作物の食害や、掘り返しなどから守ることが出来るため、人の手で植えられていた。

また、ヒガンバナの根が張ると土を締める性質があり、田畑の畔に植えると土が固まるため植えられた、ともいわれている。

ヒガンバナは有害物質をもつことで、ヒガンバナ自身の球根が動物に食べられることなく生え続けられる特性をもち、人々がその特性を様々な用途に有効活用してきた歴史がある。

種類

ヒガンバナ(彼岸花)

日本、中国原産。本州、四国、九州に自生している。

草丈は、約30~50㎝。花色は赤色。

1つの花茎に、細長くて縁が波打ち、先端が強く反り返った花弁が6枚、雄しべが6本、雌しべが1本で構成される花が、5~8個(通常6個)ほど横向きに咲く。

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ヒガンバナの群生
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シロバナマンジュシャゲ(白花曼珠沙華)

ヒガンバナとショウキズイセンの自然交雑種。草丈は約60cm。

花色は白色、クリーム色、薄いピンク色など。

ヒガンバナに比べて花弁がやや幅広。

葉は花後に出る。花期は9月頃。

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シロバナマンジュシャゲ
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シロバナマンジュシャゲのアップ

ショウキズイセン(鍾馗水仙)

花の形状はヒガンバナに似ている。草丈は約60cm。花色は黄色。

ヒガンバナに比べて花弁が幅広く、花弁の先端の反りは浅い。

別名は、「ショウキラン」と呼ばれている。花期は9~10月頃。

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ショウキズイセン

キツネノカミソリ(狐剃刀)

本州、四国、九州に自生している。

草丈は約30~50cm。花色はオレンジ色。花弁の縁は波打たない。

早咲きの品種で、花期は8~9月頃。

葉は、春に生え始めて、初夏に枯れた後、花茎が伸びて開花する。

ヒガンバナとは違い、緑色に結実して、中に黒い種子を作る。

変種に「オオキツネノカミソリ」や「ムジナノカミソリ」などがある。

別名は、「キツネノタイマツ」、「キツネユリ」、「キツネバナ」などと呼ばれている。

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ヒガンバナには、他にも数多くの種類があります。

ヒガンバナは、鮮やかな花色と独特の花姿や、独自の生態を持ち、古くから人々と共存してきました。

ヒガンバナは、昔から人々の暮らしに役立つ実用的な植物であり、花の形状や咲く場所などからミステリアスな魅力も持っています。

秋のお彼岸の頃になったら、お出かけの際にヒガンバナを探してみるもの楽しいですね。

  1. 鱗茎(りんけい)とは … 地下茎の一種で、短い茎の周囲に生じた多数の葉が養分を貯えて多肉となり、球形や卵形になったものユリ、タマネギ、チューリップなどにみられる。 ↩︎
  2. 救荒植物とは … 飢饉や戦時などの食料不足時に、食料を補うために利用される植物のこと ↩︎
  3. 減数分裂とは … 精子、卵、花粉、胞子など生殖細胞が作られるときに起こる細胞分裂のことで、2回の連続した核分裂により染色体数が半減することが特徴 ↩︎
  4. 配偶子とは … 有性生殖の際に接合する細胞で、新しい個体を作るために必要な生殖細胞のこと、精子や卵子がこれにあたる ↩︎
  5. 栄養生殖とは … 胚や種子を経由せずに 根、茎、葉などの栄養器官から、次の世代の植物が繁殖する「無性生殖とよばれる生殖方法の一つ ↩︎
  6. 無性生殖とは … 生殖の方法の一つで、配偶子の接合によらない生殖のこと ↩︎