ビーバーは、体よりも大きな木の枝を運んで巣作りやダムを作る、器用な動物です。
ビーバーの特徴や生態、種類などについて紹介します。
特徴
| 正式名称 | ビーバー |
英語名 | Beaver |
| 分類 | 齧歯目 ビーバー科 |
| 生息地 | 北アメリカ、ヨーロッパ、アジア |
| 体長 | 60~100cm |
| 体重 | 10~35kg |
| 性格 | 知的、協調性が高い |
| その他の特徴 | 基本的に夜行性 齧歯類の中では、カピバラに次いで2番目に大きい 巣を作る際に、必要であれば川の流れをせき止めるダムを建設する 冬に備えて食料を貯蔵する性質をもつ 一夫一妻制 齧歯類で唯一、消化管の末端部、排尿口、生殖口を兼ねる開口部である「総排出腔」をもつ 寿命は、10〜20年といわれている 天敵はクマ、オオヤマネコ、コヨーテ、ピューマ、キツネなど |
| チャームポイント | モフモフの被毛、前足で物を掴むしぐさ |

生態
ビーバーは、川や湿地帯などに生息していて、水中で過ごすこと多く、水辺で生活しやすい体の特徴を持っています。
身体的特徴
ビーバーは泳ぐことが得意で、最高時速8kmほどで泳ぎ、水中に約15分間潜り続けられる。
指の数は、前足、後ろ足とも5本で、後ろ足には水かきがついている。
前足に水かきはないが、長い爪があり、巣穴の材料となる土を掘るのに適している。
前足で器用に物を掴めるため、エサを持って口に運んだり、巣の材料などを抱えながら、2足歩行で移動したりする。
鼻と耳は、水中で閉じることが出来て、目には瞬膜1があり、水中でゴーグルの役割を果たす。
目、鼻、耳が一直線上にあるため、泳ぐ際に目、鼻、耳を出して水上の様子を確認することが出来る。
長いひげは、暗闇の中でも方向を感知できる。
歯
歯は、齧歯類の特徴で、一生伸び続ける。
大きな前歯は、木をかじり倒すほど硬くて丈夫で、オレンジ色をしている。
前歯がオレンジ色である理由は、前歯を保護するエナメル質に鉄分が豊富に含まれていて、木をかじる際に、木の成分の「タンニン」に反応して酸化するため。
奥歯は白い。


しっぽ
尾は、船のオールのように平らで幅が広く、うろこ状の皮膚に覆われている。
泳ぐ際には、しっぽを上下に動かして推進力を得ている。他にもバランスを保ったり、泳ぐ方向を決める舵のような役割を果たしたりする。
危険な状況になると、しっぽを水面に叩きつけて大きな音を出して、仲間に危険を知らせたり、天敵を遠ざけようとしたりする。縄張りをアピールすることもある。
厳しい冬に備えて、しっぽに脂肪を蓄えておくこともできる。
被毛
ビーバーの被毛は、白色の密生した柔らかくて保温性が高いアンダーコートと、硬くて防水性のある長いガードヘアの二層構造になっていて、皮膚が水に濡れて体温が奪われるのを防ぐ。
冬の寒い水中でも活動できるよう、防水と保温に優れた被毛のほかに、分厚い皮下脂肪を蓄えている。
食性
草食性で、野生下では主に樹皮、木の葉や根、小枝や水生植物などを食べる。
飼育下では、リンゴ、ニンジン、サツマイモ、キャベツ、木の葉、枝などを食べる。
1日に2kgものエサを平らげるほどの大食漢。
巣作り
巣は「ロッジ(小屋)」と呼ばれていて、天敵から身を守るために川や湖などの水中に作られる。
ロッジには、母ビーバーと父ビーバー、その年に生まれた赤ちゃんビーバーと、1~2歳の子ビーバー達など、10頭ほどの家族で暮らしている。
ロッジは、木の枝や泥でドーム型に作られていて、入口は水中にある。水に潜れない天敵が、中に入れないつくりになっている。
ロッジ内の一部の床は、水面より高い位置にあり、水上の乾いた場所で食事や睡眠をとることが出来る。
また、ロッジはエサが不足する冬には、エサの貯蔵庫としての役割を果たす。夏や秋に木の枝や幹を貯蔵する習性があり、巣穴近くの水中にも沈めて保管される。
必要であれば、ロッジの安全性を保つために必要な水位(水深1.5~2mほど)を維持する目的で、ダムを作り、水の流れをせき止める。
水位の変化が少ない場所では、ダムを作らずにロッジのみが作られる。


周辺の生態への影響
ビーバーは、生態系の維持に不可欠な種である「キーストーン種」に分類されている。
ビーバーがダムを作ると、その周辺の生態環境は一変する。
それまでは水流で浸食されていた場所がせき止められることで、池や湿地になり、水生植物が育ちやすい環境に変化する。
水生植物が増えると、それを食べる魚類や両生類、爬虫類が現れて、そこに住む魚をエサにする鳥類もやってくる。
また、ビーバーは木を切り倒すため、森の環境も変化する。
作られたダムは、森林火災が発生した際に延焼を防いだり、洪水を防止したりする効果もある。
ビーバーの作るダムによって出来た池や湿地は、長い年月をかけて土砂などが堆積していき、そのうち水が無くなり、草木が茂りやすい栄養豊富な土壌になる。
ビーバーのダム作りが、周辺地域の生物多様性に貢献していて、生態系に大きな影響を与えている。
種類
ビーバーは、「アメリカビーバー」と「ヨーロッパビーバー」の2種類があります。
アメリカビーバー(染色体数:40本)とヨーロッパビーバー(染色体数:48本)が同じ生息地にいた場合でも、染色体数が異なるため、交配することはできません。
それぞれの種類について紹介します。
アメリカビーバー
カナダやアメリカ合衆国などに生息している。
体長は60~90cm。体重は13~32kg。
家族単位で生活していて、巣作りや育児、食料の貯蔵などを家族で協力して行う。
繁殖期は12~翌年3月で、妊娠期間は約128日。1度に3~6匹を出産する。
被毛は赤褐色、または黒色。
生後間もない赤ちゃんビーバーは、体重が300~600gほどで、すぐに泳ぐことが出来るようになる。
生後3カ月頃に離乳して、生後2年ほどで独立する。

ヨーロッパビーバー
ヨーロッパ、ロシア、モンゴルなどに生息している。
体長は80~100cm。体重は13~3kg。
家族単位で生活していて、巣作りや育児、食料の貯蔵などを家族で協力して行う。
繁殖期は12~翌年5月で、妊娠期間は約107日。1度に2~6匹を出産する。
被毛は、アメリカビーバーと比べると、やや灰色味を帯びている。
赤ちゃんビーバーは、生後2~3年ほどで独立する。


ビーバーの活動は、生息地の環境に大きな影響を与えていて、森や川、湖などを豊かにする大切な役割を果たしています。
家族で力を合わせてロッジを作ってメンテナンスを行い、食料を協力して集めるなど、ひたむきに生きる姿は、どこか人間の生活に重なるような気がします。
ビーバーは環境に優しい生態を持っていますが、私達もビーバーのように自然に何かを還元できているか、今一度考えてみるいい機会かもしれません。
- 瞬膜とは … まぶたとは別の、水平方向に動くことで眼球を守る透明、又は半透明の膜のこと ↩︎