ユリは、その華やかな花姿から、贈答品として人気の高い花です。
ユリの特徴や花言葉、種類などについて紹介します。
特徴
科名/属名 | ユリ科 ユリ属 |
英語名 | Lily |
生育サイクル | 多年草 |
開花期 | 5月~8月 |
色 | 赤、白、黄、ピンク、オレンジ、黒、複色 |
原産地 | 北半球 |
おすすめの環境 | 日当たりや風通し、水はけの良い場所 (品種によっては、半日陰を好む) |
その他の特徴 | 種類によって生育条件が異なるが、全体的に乾燥と高温が苦手 耐寒性が強い 古くから食用に利用されてきたユリ根は、鱗茎(りんけい(地下茎の一種))の部分である 現在食用とされている種類は、オニユリ、コオニユリ、ヤマユリ、カノコユリの4種類 |
栽培のコツ | 庭植えは、植えつけ後に水やりをしたら、あとは降雨にまかせる 鉢植えは、土の表面が乾いたら、たっぷりと水やりをする 花後も葉が枯れるまで、土が乾かないように注意して水やりを続ける |
花言葉
全体の花言葉と花の色ごとの花言葉があります。
全体 | 純粋、無垢、威厳 |
赤 | 優しさ、願望、虚栄心 |
白 | 純潔、威厳、無邪気 |
黄 | 陽気、甘美、偽り |
ピンク | 上品、優雅、虚栄心 |
オレンジ | 華麗、愉快、軽率 |
黒 | 呪い、復讐 |
種類別の花言葉
ユリには、種類ごとの花言葉もあります。
マドンナリリー | 純潔、無垢 |
カサブランカ | 純潔、威厳、高貴 |
ヤマユリ | 荘厳、威厳 |
テッポウユリ | 純潔、甘美、威厳 |
オニユリ | 賢者、富と誇り |
ササユリ | 清浄、上品 |
クルマユリ | 純潔、多才な人 |
カノコユリ | 上品、慈悲深さ |
スカシユリ | 注目を浴びる、飾らぬ美 |
ヒメユリ | 誇り |
種類
ユリは、原種が100種類以上あり、園芸品種は130品種ほどあるといわれています。
原種のうち、15種類は日本に自生していて、そのうち7種類は日本の固有種です。
日本に自生しているユリの種類は以下の通りです。
- ヤマユリ (日本固有種)
- サクユリ (日本固有種)
- タモトユリ (日本固有種)
- ウケユリ (日本固有種)
- ササユリ (日本固有種)
- オトメユリ (日本固有種)
- スカシユリ (日本固有種)
- イワトユリ
- テッポウユリ
- ヒメユリ
- スゲユリ
- カノコユリ
- オニユリ
- コオニユリ
- クルマユリ
ユリの分類については、いくつか方法がありますが、今回は原種を4系統、または7系統にした分類と、園芸品種を8系統にした分類について紹介します。
原種の分類<4系統>
ユリの原種を4系統に分類したもので、1925年に英国の植物学者のアーネスト・ヘンリー・ウィルソン氏(E.H.Wilson)によって発表されました。ユリの花の形態や咲く向きで分類されています。
①テッポウユリ亜属
筒状の花を横向き(稀に下向きや斜上向き、上向き)に咲かせる。
代表的な品種:テッポウユリ、ササユリ、オトメユリ、タカサゴユリ など


②ヤマユリ亜属
日本固有種の原種であるヤマユリを元にして交配された種類。
漏斗状の花を横向きに咲かせる。
代表的な品種:ヤマユリ、サクユリ など

③スカシユリ亜属
盃状の花を上向きに咲かせる。
代表的な品種:スカシユリ、エゾスカシユリ、イワトユリ、ヒメユリ など

④カノコユリ亜属
鐘状に花弁が外側に丸まっていて、下向きに咲く。
代表的な品種:カノコユリ、オニユリ、クルマユリ など

原種の分類<7系統>
上記4系統の分類の他にも様々な分類方法があるようですが、現在、専門家に広く受け入れられている、別の分類についても紹介します。
ユリの原種を7系統に分類したもので、1949年に英国の植物学者のハロルド・フレデリック・コーマー氏 (H.F.Comber)によって発表されました。ユリの形態だけでなく、発芽のしかたや生態学的特徴などから分類されています。
< 発芽のしかた(発芽型)の区分について >
⑴ 地上発芽型(epigeal germination) … 発芽時に子葉(最初の葉)が地上に現れるタイプで、「地上速発芽型」と「地上遅発芽型」に分けられる。
- 地上速発芽型 … 発芽後すぐに子葉が地上に出て、比較的短期間で成長し、光合成を開始する。
- 地上遅発芽型 … 発芽後、一定期間地中で成長した後、地上に芽を出す。発芽から開花までの期間が長い。
⑵ 地下発芽型(hypogeal germination) … 発芽時に子葉が地中に留まり、翌年以降に地上に芽を出すタイプで、「地下速発芽型」と「地下遅発芽型」に分けられる。
- 地下速発芽型 … 種子が発芽するとすぐに根を伸ばし、球根を形成して、比較的短期間で地上に芽を出す。
- 地下遅発芽型 … 発芽後、球根が成長するまでの期間が長く、地上に葉を出すまでに約1年以上かかる。
①マルタゴン・グループ(Martagon節)
主にヨーロッパやアジアの寒冷地や温帯地域に分布している。
花弁が反り返る性質をもち、下向きに咲く。
発芽型は、地下発芽型。
代表的な品種:マルタゴンリリー、クルマユリ、タケシマユリ など
②アメリカン・グループ(Pseudolirium節)
北アメリカに分布している。
上向きに咲く。
代表的な品種:フィラデルフィアリリー など
③キャンディダム・グループ(Liriotypus節)
主にヨーロッパに分布している。花色は白色。
発芽型は、地上発芽型。
代表的な品種:マドンナリリー など
④オリエンタル・グループ(Archelirion節)
主に日本固有種で構成されている。
発芽型は、地下遅発芽型。
代表的な品種:ヤマユリ、サクユリ、タモトユリ、ササユリ など


⑤アジアティック・グループ(Sinomartagon節)
日本を含む東アジアに分布している。
7系統の中で、最大のグループ。
発芽型は、地上速発芽型。
代表的な品種:ヒメユリ、オニユリ、コオニユリ、マツバユリ など


⑥テッポウユリ・グループ(Leucolirion節)
主にアジアを中心に分布している。花色は白色。
長い筒状の花を咲かせる。芳香が強い。
発芽型は、地上速発芽型。
代表的な品種:テッポウユリ、タカサゴユリ など
⑦エゾスカシユリ・グループ(Daurolirion節)
主に主に中国東北部、シベリア、日本に分布している。
発芽型は、地下速発芽型。
耐寒性に優れている種が多い。
代表的な品種:エゾスカシユリ、スカシユリ など

園芸品種の分類
ユリの園芸品種は、1963年にイギリスの王立園芸協会 (Royal Horticultural Society、略してRHS)によって、8系統の分類が定められました。
この分類方法は、園芸品種を交配する親となる原種ごとに8系統に分類して、さらに原種およびその変種を加えた9系統で構成されています。
①アジアティック・ハイブリッド
アジア原産のエゾスカシユリ・イワトユリ・ヒメユリ・オニユリなどを元にして交配された品種の系統。
草丈は30~150cm。花径は10~15cmほど。
花色は赤色、黄色、オレンジ色など。
花は上向きに咲く種類が多いが、下向きに咲くものもある。
花の芳香は、ほとんどない。
花持ちが良いため、切り花として利用されることが多い。
開花時期は6~8月。
代表的な品種:エゾスカシユリ・イワトユリ・ヒメユリ・オニユリ、コネチカットキング
②マルタゴン・ハイブリッド
ヨーロッパに自生するマルタゴンリリーと、タケシマユリを元にして交配された品種の系統。
日本ではほとんど見られない。
草丈は100~200cm。花径は5cmほど。
花色は白色、薄い黄色、ピンク色、濃い赤色など。
花弁は外側に巻いていて、下向きに咲く。
開花時期は6月頃。
代表的な品種:マルタゴンリリー、クルマユリ、タケシマユリ
③キャンディダム・ハイブリッド(マドンナリリー・ハイブリッド)
ヨーロッパ原産のマドンナ・リリーと、ヨーロッパ原産の他の品種(マルタゴン・リリーを除く)を元にして交配された品種の系統。
豊かな芳香がある。
日本ではほとんど見られないが、ヨーロッパでは庭園で栽培されることが多いといわれている。
④アメリカン・ハイブリッド
北米原産のユリによる交配品種の系統。
草丈は200cmほどに達することがある。
花弁が大きく外側に巻いていて、大輪の花を下向きに咲かせる。
日本ではほとんど見られないが、庭植えに適している。
⑤ロンギフローラム・ハイブリッド
テッポウユリとタカサゴユリなどの交配品種の系統。
トランペット状の大きな花を横向きに咲かせる。
花色は白色。強い芳香をもつ。
品種群の名前が長いため、学名表記の際は「L」と省略される。
代表的な品種:テッポウユリ、タカサゴユリ、シンテッポウユリ
⑥トランペット・オーレリアン・ハイブリッド
リーガルリリーとキカノコユリなど中国・アジア原産のユリの交配品種の系統。
トランペット状の花を横向きに咲かせる。
強い芳香をもつ。
最初の品種が生み出された、フランスのオーレリアン地方が名前の由来になっている。
学名表記の際は「T」と省略される。
代表的な品種:リーガルリリー、アフリカンクイーン、ゴールデンスプレンダー
⑦オリエンタル・ハイブリッド(ジャパニーズ・ハイブリッド)
ヤマユリ、カノコユリなど日本固有種の交配品種の系統。花径は15~30cm。
杯形や扁平形で、花弁がゆるく外側に巻いていて、上向きに咲く。
花色は赤色、白色、黄色、紫色、ピンク色、複色 など。
1本の茎に6~8個の花を咲かせる。
大輪種で強い芳香がある。
花弁に斑点や縁取りがある品種が多い。
学名表記の際は「O」と省略される。
代表的な品種:カサブランカ

⑧その他の園芸品種
上記①~⑦に属さない組み合わせの品種の系統。
⑨原種・変種
原種およびその変種。

ユリは、お祝いの時に贈ったり、仏花として利用されたりして、人生の様々な節目に彩りを与えてくれる花です。
その美しい花姿は、古くから世界中の人々を魅了して、これまでにたくさんの品種が生まれてきました。
多くの魅力的な品種のなかから、自分好みのユリを探しに、ユリの名所に出かけてみるのはいかがでしょうか。