ヤマネコとは、イエネコを除いた小型から中型の野生ネコの総称で、世界中に広く生息しています。
ヤマネコの特徴や種類、イエネコとの違いについて紹介します。
特徴
| 正式名称 | ヤマネコ |
| 英語名 | wildcat |
| 分類 | 食肉目 ネコ科 |
| 生息地 | ヨーロッパ、アフリカ、アジア など |
| 体長 | 35~130cm |
| 体重 | 3~35kg |
| 性格 | 警戒心が強い、単独行動を好む |
| その他の特徴 | 基本的には人間に懐かない 耳の裏に「虎耳状斑(こじじょうはん)1」と呼ばれる白斑があることが多い |
| チャームポイント | 野生で生き抜くワイルドさを持つが、モフモフしている |
種類
ヤマネコは、世界中に30種類前後(どこまでネコ科動物を含めるか明確な区分がないため、分類方法により種類数が変わる)分布しています。
現在、日本には「ツシマヤマネコ」と「イリオモテヤマネコ」の2種類が生息しています。
ヤマネコの主な種類を紹介します。
ツシマヤマネコ
長崎県対馬にのみ生息している。ベンガルヤマネコの亜種2とされている。
体重は3~5kg、体長は約50~60cm。被毛は栗色、またはクリーム色。
全身に斑点模様があり、しっぽは太くて長く、まだらな縞模様がある。
耳の後ろに白い斑紋(虎耳状斑(こじじょうはん))がある。
主に薄明薄暮に活動する。
森林や里山、田畑などに生息していて、ネズミなどの小型哺乳類や鳥類、昆虫類などを捕食する。
推定個体数は100頭弱で、最近は減少傾向から回復傾向に転じたと評価されているが、依然として頭数が少ないことから、保護活動が続けられている。
環境省レッドリストでは「絶滅危惧IA類(CR)」(→ ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)に指定されている。

イリオモテヤマネコ
沖縄県西表島にのみ生息している。ベンガルヤマネコの亜種とされている。
体重は3~4kg、体長は約50~60cm。被毛は暗褐色。
全身に斑点模様があり、足は太くて短い。
耳の後ろに虎耳状斑がある。
主に夜行性で、低地の湿地やマングローブ、沢沿いなどを好み、ネズミなどの小型哺乳類や鳥類、カエルや昆虫類、魚類、甲殻類を捕食する。
限られた地域で生き残るために、数多くの種類の動物を捕食する必要があり、食性の幅が広いのが特徴。
推定個体数は約100頭で、減少傾向にある。
ツシマヤマネコと同様に、環境省レッドリストでは「絶滅危惧IA類(CR)」に指定されていて、保護活動が続けられている。

ベンガルヤマネコ
アジア全域に広く生息している。
体重は3~7kg、体長は約45~75cm。被毛は黄褐色、または灰褐色。
体全体に褐色や黒色の斑点があり、額から首にかけて縦縞模様がある。
耳の後ろに虎耳状斑がある。
夜行性、または薄明薄暮性で、低地から山地にある森林や草地、農地や水辺周辺に生息している。
ネズミなどの小型哺乳類や鳥類、カエルやトカゲ、ヘビ、昆虫類、魚類などを捕食する。
泳ぎがとても得意で、水中の魚を捕らえることができる。
イエネコとの交配が可能で、ペットの品種である「ベンガル」はこうした交配から生まれた。
ツシマヤマネコ、イリオモテヤマネコはこの種類の亜種として分類されている。

リビアヤマネコ
現在ペットとして飼われている、イエネコの祖先と考えられている。
アフリカや西アジアに生息している。
体重は3~8kg、体長は約45~80cm。被毛は淡い茶色、または灰褐色。
体全体に褐色や黒色の縞模様がある。
耳の後ろに虎耳状斑がある。
主に夜行性で、サバンナや岩場、農地などに生息していて、ネズミなどの小型哺乳類や鳥類、カエルやトカゲ、ヘビ、昆虫類などを捕食する。
乾燥した地域に生息するため、長時間水を飲まずにいられる体のしくみを持ち、基本的には水分はエサから摂取している。
イエネコの多くが、あまり水を多く飲みたがらないのは、この名残といわれている。
別名は「アフリカヤマネコ」と呼ばれている。

サーバル
南アフリカに生息している。
体重は6~18kg、体長は約60~90cm。被毛は黄褐色で、黒色の斑点が入る。
体は細く、足が長い。耳は大きく、優れた聴覚をもっている。
耳の後ろに虎耳状斑がある。
夜行性、または薄明薄暮性で、サバンナや草原、水辺などに生息している。
高い跳躍力をもち、ジャンプして鳥類や昆虫類などを捕らえたり、長い足でネズミなどを巣穴から掘り出して捕らえたりする。

カラカル
アフリカ、中央アジア、西アジアなどに生息している。
体重は8~20kg、体長は約55~90cm。被毛は赤褐色、または赤みを帯びた黄褐色。
体は細く、足が長い。
耳先に黒色で、4~5㎝ほどの長い飾り毛があるのが特徴。
耳の後ろに虎耳状斑がある。
主に夜行性だが、日中に活動することもある。
森林やサバンナ、藪地など、乾燥した土地を好み、ネズミやウサギ、ハイラックスといった小型哺乳類や鳥類や爬虫類、昆虫類や魚類などを捕食する。
約3mに達するほどの高い跳躍力を活かして、飛び立つ鳥をたたき落としたり、時速80kmの俊足で獲物を追いかけたりして、高い確率で獲物を捕らえる。

オセロット
アメリカ南部からアルゼンチン北部にかけて生息している。
体重は7~18kg、体長は約55~100cm。
被毛は黄褐色、または赤みがかった灰色で、「ロゼット」と呼ばれる縁取りのある模様と、黒色の斑点や縞模様が全身にある。
耳の後ろに虎耳状斑がある。
夜行性、または薄明薄暮性で、日中は樹上や茂みで休んでいることが多い。
熱帯雨林や湿地帯、サバンナなど多様な環境に適応している。
ネズミやウサギなどの小型哺乳類や鳥類や爬虫類、魚類、甲殻類などを捕食する。
オセロットの狩りは、主に待ち伏せ型で、茂みなどに潜みながら獲物に静かに近づき、一気に飛び掛かって捕らえる方法だが、木登りや泳ぎが得意なため、環境によって狩りの方法も様々ある。

ヨーロッパオオヤマネコ
ユーラシア大陸に生息している。
オオヤマネコの中で、体が最も大きい種類。
体重は14~35kg、体長は約70~130cm。
被毛は黄褐色、または赤灰色で、茶色や黒色の斑点があり、冬になると灰色が強くなる。
耳先に黒色の長い飾り毛がある。
雪の上でも歩きやすいよう、大きな足をしていて、足裏に長い毛が密生している。
耳の後ろに虎耳状斑がある。
夜行性、または薄明薄暮性で、主に森林に生息している。
ネズミやウサギ、リスといった小型哺乳類や、鳥類や爬虫類、昆虫類、魚類、シカやイノシシなど大型哺乳類を捕食する。
狩りの手法は、主に待ち伏せ型。
別名は「ユーラシアオオヤマネコ」と呼ばれている。
なかでも、ロシアのシベリア地方に生息している個体は「シベリアオオヤマネコ」と呼ばれていて、寒冷地への適応が発達していて、体が大きい傾向がある。

マヌルネコ
ロシアやモンゴル、中国など、中央アジア、東アジアの山岳地帯や高原地帯に生息している。
「マヌル」とは、モンゴル語で「小さいヤマネコ」という意味。
体重は2.5~5kg、体長は約45~65cm。被毛は灰色、または黄褐色。
被毛の色は、生息地の岩場に擬態するのに適している。
高山帯の寒冷な気候に適応するために、最大で7cm(冬期)にもなる厚い被毛が全身を覆っている。
足裏にも長い毛が密生していて、雪や寒さから足を守っている。
高密度のフワフワな被毛によって大きく見えるが、実際の体の大きさはイエネコとほとんど変わらない。
見えにくいが、耳の後ろに虎耳状斑がある。
多くのネコ科動物は、瞳孔が縦長であるが、マヌルネコは丸い瞳孔を持っている。
足は短く、岩場などを低く安定した姿勢で移動することが出来る。
夜行性、または薄明薄暮性で、岩場や草原を好み、ウサギやネズミ、リスなどの小型哺乳類や、鳥類や昆虫類などを捕食する。
狩りの手法は、主に岩陰などに潜んで獲物を狙う、待ち伏せ型。
別名は「モウコヤマネコ」と呼ばれている。

スナネコ
北アフリカや西アジアの砂漠や乾燥地帯に生息している。
体重は1.5~3.5kg、体長は約40~57cm。被毛は砂色、または灰色。
被毛の色は、生息地の砂地に擬態するのに適している。
足裏にも長い毛が密生していて、日中の暑い砂や夜間の寒さから足を守っている。
大きな耳の内側は毛で覆われているが、耳の中に砂が入るのを防ぐためと考えられている。
聴力が優れているため、砂の下にいる獲物の気配を察知したり、夜間でも獲物を探したりすることが出来る。
目立ちにくいが、耳の後ろに虎耳状斑がある。
主に夜行性で、スナネズミやノウサギといった小型哺乳類や、鳥類、トカゲやヘビ、昆虫類などを捕食する。
獲物を見つけると、低い姿勢で忍び寄り、素早く飛びかかって一気に捕らえる。
獲物が砂の中にいた時は、掘って捕食する。
乾燥した地域に生息するため、長時間水を飲まずにいられる体のしくみを持ち、基本的には水分はエサから摂取している。

スナドリネコ
南アジア、東南アジアの湿地や沼地、マングローブ林などに生息している。
体重は5.5~12kg、体長は約55~85cm。
被毛は灰色、または茶色で、黒色の斑点が入り、額から首にかけて縦縞模様がある。
耳の後ろに虎耳状斑がある。
水辺で魚を捕るのが得意で、前足の指の間には水かきがある。
泳ぐことが得意だが、深い水中は好まないといわれている。
日本語の「漁る(すなどる)」が名前の由来。
主に夜行性で、魚類や貝類、甲殻類、カエルやヘビ、水鳥やネズミなどの小型哺乳類を捕食する。
狩りの手法は、主に水辺で待ち伏せをして、前足ですくい上げたり、水中に飛び込んで獲物を捕獲する。
チーターと同様に、爪を引っ込めることができない。

イエネコとの違いについて
イエネコは、分類上はヤマネコの種類に含まれていますが、実際はヤマネコとは区別されています。
大きな相違点は、ヤマネコが野生下で生息しているのに対して、イエネコは人間の生活圏で過ごし、人と交流することが出来ることです。
ヤマネコは警戒心が強く、人に攻撃してくることがあり、懐くことはあまりありません。
イエネコの祖先は、先ほどご紹介した「リビアヤマネコ」と考えられています。
ヤマネコとイエネコの主な相違点を、表にして紹介します。
| ヤマネコ | イエネコ | |
| 生活圏 | 自然の中 | 人の近く |
| 人への反応 | 警戒心が強く、攻撃的 | 慣れやすく、人懐こい |
| 行動 | 縄張り意識が強く、基本的に単独行動 | 基本的に単独行動だが、距離感を保ちながら集会を開いたりする |
| 行動範囲 | 広い | 比較的狭くても大丈夫 |
| 活動時間 | 夜や夕方、明け方などの薄暗い時間 | 環境により柔軟に変化する |
| 食べ物 | 自力で獲物を捕らえる | 人からエサを貰うという選択肢もある |
| 存在を伝える方法 | におい付けが中心 | しぐさ、鳴き声 |
ヤマネコも、繁殖期や子育て期は、一時的に他の個体と行動を共にします。

ヤマネコはイエネコとは違い、ネコ科の野生動物であるため、人の力を借りることなく、自然の厳しさと常に対峙しています。
現在、ヤマネコには多くの絶滅危惧種が含まれており、彼らが末永く生き続けられる環境を守るために、世界中で様々な保全活動が行われています。