コアラの生態と特徴について

Koala その他動物(大型・中型)
記事内に広告が含まれています。

コアラといえば、動物園の人気者で、木の上でまどろむ姿や、ユーカリを食べる様子などが可愛らしいですね。コアラが普段どんな生活をしているか、その詳細については意外と知られていないかもしれません。

コアラの生態や特徴について紹介します。

特徴

正式名称コアラ
英語名Koala
分類双前歯目(そうぜんしもく(別名:カンガルー目)) コアラ科
生息地オーストラリア(東部から南東部にかけての沿岸にある森林地帯)
体長65cm~82cm
体重4kg~15kg
性格意外と荒々しい気性、ストレスに弱い
その他の特徴半夜行性で、夕方から夜、明け方にかけて活動が活発になるが、時々昼間に行動したり、
夜間に寝たりすることもある
1日に約18~20時間寝ている
野生のコアラの寿命は、約13~18年(雌のほうが長生きする傾向がある)で、飼育下では
20年以上生きることもある
コアラ」とは、オーストラリアの先住民であるアボリジニの言葉で「水を飲まない」
という意味をもつといわれている
主食のユーカリの葉の約50%は水分で、通常は必要な水分をユーカリの葉から摂取して
いるが、干ばつ等によりユーカリに水分が多く含まれていない時は、水飲むこともある
人間と同じような指紋がある
尾てい骨のみ残っていて、尻尾は退化して存在しない
別名は、「子守熊(コモリグマ)」、「袋熊(フクログマ)」などと呼ばれている
チャームポイントフサフサした被毛、大きな鼻、おっとりとした動作
Koala3
コアラ

生態

野生のコアラは、オーストラリアのクィーンズランド州、ビクトリア州、南オーストラリア州、ニューサウスウェールズ州のユーカリの森林地帯に生息していて、ほとんどの時間をユーカリの木の上で過ごしています。

コアラは縄張り意識が強く、縄張りに侵入されると噛みついたり引っかいたりして追い出そうとします。普段は単独行動ですが、繁殖期には雄と雌が一緒にいたり、子育て中の母コアラが子供と一緒にいたりします。特定の巣を作ることはなく、個体ごとに生活圏を持っていて、強い雄ほど広い生活圏をもつ傾向があります。雌は生まれた生活圏の中で過ごし、雄(一部の強い雄を除く)は移動して生活します。

コアラの主食であるユーカリは、地域毎に異なる種類が自生しているため、生息地によってコアラが食べるユーカリの種類は変わります。

その他のコアラの生態について紹介します。

北部と南部

オーストラリアの北部と南部に生息するコアラには、それぞれ違った特徴がある。

北部のコアラは、被毛は胸や首、腕や脚の内側、耳の中は白色で、その他は灰色。

南部のコアラは、北部のコアラに比べて体が大きく、体毛や皮下脂肪が多い。南部の冬の寒さに適応するためといわれている。被毛は胸や首、腕や脚の内側、耳の中は白色で、その他は茶褐色または黒に近い灰色。

南半球にあるオーストラリアは、北が暖かく南が寒い傾向がある。南部のほうが寒さが厳しいため、この気候が南部のコアラの特徴の要因になっている。

食べ物

コアラは、一日におよそ500g~1kgのユーカリの葉を常食している。900種類以上あるユーカリのうち、コアラは約30~40種類を食用にしている。さらにコアラが好んで食べるユーカリは4種類ほどに限られていて、個体差や気分などにより組み合わせが違うといわれている。

ユーカリの葉には栄養分が少なく、タンニンやフェノール系物質など、体に有害な成分が多く含まれているため、多くの動物は食べない。ゆったりとした動きのコアラは、他の動物と食料を奪い合うより、ほとんどの動物が食べないユーカリの葉を主食にすることを選び、生き残ることができた。

コアラの盲腸は約2mもあり、腸内にいる何百万もの微生物がユーカリの葉を発酵させて、有害成分を分解して、消化吸収する。栄養価が低いユーカリの葉は、繊維質が多く有害成分もあるため、消化するまで非常に時間がかかり、多くのエネルギーが必要になる。コアラが1日に約18~20時間寝て過ごすのは、活動量を抑えて体力の消耗を防ぎ、エネルギーを蓄えるためである。

コアラは時々ユーカリの他に、アカシアやティーツリーの葉や芽を食べることがある。

食事中のコアラ
Koala5
お休み中のコアラ

身体的特徴

コアラは、フサフサした被毛に覆われて可愛らしい外見だが、脂肪が少なく筋肉質な体をしている。

雄は胸の中央に臭いを出す「臭腺(しゅうせん)」があり、雌はお腹に子供を育てるための袋である「育児嚢(いくじのう)」がある。雄のほうが雌よりも体が大きい。雄は臭腺から茶色い分泌液を出すが、この分泌液を木にこすりつけて自分の縄張りであることを相手に知らせる。臭腺からでる臭いは、ユーカリの香りを強くしたようなものといわれている。

コアラには、他にも樹上の生活に適した、様々な身体的特徴がある。

大きな鼻

コアラはとても優れた嗅覚を持っていて、大きな鼻でユーカリの種類を区別して、有害成分の度合いをかぎ分けることができる。また、他のコアラが木に付けた臭いもかぎ分ける。

他の感覚器官については、口はユーカリの葉だけを食べるため小さく、目も小さくて視力はあまり良くない、耳は比較的大きく聴力はとても良いといわれている。

前足・後ろ足

前足は指が5本あり、長く鋭い爪がついていて、親指が2本あるのが特徴で、しっかりと物を握ることができる。後ろ足も指が5本あり、長く鋭い爪がついているが、親指の爪がなく1本で、人差し指と中指がくっついていて、ノミ取りなどの毛づくろいをするのに適している。それぞれの指には指紋がある。

木登りをする時、体を支えるために必要な、長くて力強い四肢を持っていて、前足と後ろ足の長さはほとんど同じ。足の裏はそれぞれザラザラしていて滑り止めになり、枝を握ったり木登りをする際に役立つ。爪が長く鋭いのは、木登りや隣の木へ飛び移る時に、木の皮に爪を引っ掛けて移動するためである。

Koala7
こちらもお休み中のコアラ..特徴のある足の指の形が見られる

フサフサした被毛

コアラはフサフサした厚い被毛で覆われているが、この被毛により暑さや寒さを凌げて、水を弾くので雨が降るとレインコ―トのような役割を果たす。

出産と子育て

コアラは、有袋類の草食動物で、雌はお腹に育児嚢(いくじのう)と呼ばれる袋をもっている。有袋類は発達した胎盤を持っていないかわりに、袋の中で赤ちゃんを育てる。妊娠期間は約35日で、赤ちゃんコアラは大きさが約2cm、重さが約0.5グラムほどで、目は見えず、毛もなく、耳も発達していない状態で生まれるが、触覚や臭覚などを駆使して母コアラの袋の中に自力でたどり着く。

赤ちゃんコアラは、生後6~7か月頃までは袋の中で母乳を飲んで育つ。その後「パップ」と呼ばれる、母コアラが体内で作ったユーカリの葉の未消化物を離乳食として食べることで、母コアラからユーカリの葉を消化するために必要な微生物が受け継がれ、赤ちゃんコアラの消化器官に定着する。パップには、たんぱく質も豊富に含まれている。赤ちゃんコアラは袋から出ていくまでの数週間、育児嚢から身を乗り出して下へ向かい、母コアラの特殊な排泄物であるパップを食べて過ごす。

その後、赤ちゃんコアラは次第にユーカリの葉を食べられるようになり、しばらくの間母コアラのお腹にしがみついたり、おんぶをされたりしながら生活するが、1~3歳(母コアラが次の妊娠期間に入る頃)になると親離れする。

コアラの親子

注意すべき感染症

コアラは、ストレスに弱く、もともと微生物であるクラミジアを体内に保有している。生息地であるユーカリの森の減少に伴い、ユーカリの葉を求めて移動をする際に様々なリスクが伴うため、コアラはその困難な移動に大きなストレスを感じて免疫力が下がり、クラミジアが引き起こす感染症にかかり易くなるといわれている。主な症状は、結膜炎や失明、肺炎、尿路感染で、雌は症状が悪化すると不妊症になる可能性もある。コアラの個体数の減少につながる脅威のひとつになっている。

絶滅の危機

地球温暖化による干ばつや大規模な森林火災、開発による森林破壊などにより、コアラの生息地であるユーカリの森が消失や分断される事態に陥り、コアラが生きていくうえで深刻な問題になっています。

森林破壊による例をあげると、ユーカリの森が道路で分断されていた場合、コアラがユーカリの木を求めて、木から路上に下りて道路を横断する際に自動車にはねられる事故が頻発しています。また、森が住宅地に隣接していた場合、移動の際に民家を通り抜ける事があり、飼い犬や飼い猫などに襲われて命を落とすコアラもいます。気候変動による干ばつや火災で食料不足になることも、コアラにとって大きな脅威になっています。

コアラは現在、「レッドリスト(国際自然保護連合(IUCN)が作成している絶滅危惧種のリスト)」に登録されています。

¥566 (2024/12/15 13:08時点 | Amazon調べ)

樹上で何事もなくのんびりと過ごしているように見えて、実は奥深い個性的な特徴や生態をもつコアラ。知れば知るほど面白い動物ですが、コアラを取り巻く環境が少しでも改善されるよう、応援していきたいですね。