キツネは、古くから物語にずる賢い動物として登場したり、神社などでは神様の使いとして祀られたりして、動物の中でも人々にとって身近な存在とされてきました。
そんなキツネの特徴や生態について紹介します。
特徴
正式名称 | キツネ |
英語名 | Fox |
分類 | 食肉目 イヌ科 |
生息地 | 北半球全域 |
体長 | 35~80cm |
体高 | 30~40cm |
体重 | 2.5~9kg |
性格 | 賢い、用心深い、好奇心旺盛 |
その他の特徴 | 夜行性の性質をもつ 冬眠しない 寿命は野生下では2~3年、飼育下では約10年 妊娠期間は52日前後で、一度に3~6匹出産する 天敵は、オオカミやクマ、コヨーテ、ワシやタカ、フクロウなど |
チャームポイント | ふさふさの太いしっぽ |

不思議な生態
キツネはイヌの仲間の中では珍しく、群れを作らずに単独、または家族単位での行動を好み、縦長の瞳孔やザラザラした舌を持ち、ヒゲでバランスを取るなど、ネコに近い特徴を多く持っています。
狩猟方法も、イヌやオオカミのように集団で獲物を追わずに単独で行うことが多く、獲物によって狩猟方法を変えるといった、知能の高さも伺えます。
視覚、聴覚、嗅覚のいずれも優れていて、木登りや泳ぎなども得意です。
キツネは、知能や身体能力の高さから、環境の変化に対する適応力があり、様々な地域で生息することができます。
食性
キツネの食性は、肉食に近い雑食で、主にネズミやウサギ、リスや鳥などの小動物や虫、果物などを好んで食べる。
人里に降りてきて、トウモロコシや豆類など農作物を荒らしたり、生ゴミを漁ったりすることもある。
狩猟方法
キツネは、獲物ごとに狩猟方法を使い分ける。
小動物を狩るときは、静かに忍び寄り、獲物の居場所を捉えると、一瞬で獲物に飛びかかったり、高くジャンプをして前足で獲物を押さえ込んだりして捕獲する。
ウサギなど逃げ足の速い小動物に対しては、時速50kmほどのスピードで追走して捕らえる。
キツネは、獲物が生い茂った草むらや雪の下など、見えない場所にいても捕らえることができる。
このような事が可能なのは、鋭い嗅覚や聴覚を駆使しているためといわれているが、近年の研究により、キツネが狩りの際に地球の磁場を利用して、獲物のいる方角や距離を把握しているのではないかともいわれている。
鳥を狩る際は、高さ1m以上のジャンプをして捕らえる。
キツネは、満腹で食べきれなくなると、掘った穴に獲物を埋めて、後で食料不足の時に掘り返して食べる。
獲物を埋めた場所を長期間、正確に記憶しておくことができる。
協力して子育て
キツネは、基本的には単独で行動するが、冬から春先にかけて年に1度の繁殖期に入ると、雄と雌が家族を作り、共にエサを調達し合いながら子育てをする。
出産から子育て期間(春から夏)は、いくつもの部屋や出入口のある巣穴を利用する。
巣穴は基本的に自分で掘るが、アナグマやアナウサギなどの巣穴を利用することもある。
子ギツネが成長すると、巣穴を使わなくなり、外に出て草やぶを寝床にするようになる。
子ギツネは、外の世界で遊びや探索をしながら狩りの方法を学び、秋頃に巣立っていく。
巣穴は、翌年再利用されることもある。
種類
キツネは、20種類以上存在するといわれています。
生息地域が北半球全域と広いため、それぞれの種類ごとに、各地域の特徴に適応した特有の生態をもっています。
主な種類を紹介します。
アカギツネ
北半球の森林や草原、山、砂漠といったいたるところに、最も多く生息している種類。
南半球にも19世紀頃、オーストラリアに狩猟目的で移入されて以降、現在も生息しているが、在来動物を捕食するため、生態系を破壊する害獣として駆除の対象になっている。
体長は50~80cm、体重は3~14kg。
被毛は赤褐色で腹部は白色。耳の先端は黒色で、尻尾の先端は白色。

キタキツネ
北海道に生息する、アカギツネの亜種。
都市部に生息している個体もいて、夜行性の性質をもつが、日中も活動する。
体長は約70cm、体重は4~8kg。本州以南に生息するホンドギツネよりも体が大きい。
被毛は赤褐色で腹部は白色。耳の裏と四肢の先端が黒色なのが特徴。

ホンドギツネ
本州、四国、九州に生息する、アカギツネの亜種。
被毛は赤みがかった黄色で腹部や尻尾の先端は白色。
体長は50~75cm、体重は4~7kg。

ホッキョクギツネ
ロシア・アラスカ・グリーンランド・アイスランドなど、北極圏に生息している。
体長は45~70cm、体重は1.5~9kg。
被毛は、寒冷期には毛量が多くなりフワフワした白色または灰褐色の冬毛で、雪解けの頃になると、毛量が少なく短い褐色や灰色の夏毛に生え変わり始める。冬に雪が積もらない地域では、被毛は白色にならない。
冬毛が白色になるキツネを「シロギツネ」、灰褐色になるものを「アオギツネ」と区別して呼ぶことがある。
被毛が、冬の雪景色や、夏の岩や植物の風景に溶け込むための保護色に変化することで、狩りの成功率を高めたり、天敵から身を守ったりするために役立っている。
ホッキョクギツネは、気温が-50℃以下になることも少なくない極寒の地で生き抜くために、以下のような特徴をもっている。
- 他のキツネと比べて被毛の密度が高く、アンダーコート(下毛)が全体の7割を占めていて、足の裏も毛で覆われている
- 夏頃から、冬に備えてたっぷりと脂肪を蓄える
- 「対向流熱交換系」と呼ばれる、冷えた静脈の血液が温かい動脈の血液と熱交換をして、体温が一定に保たれる体のしくみを持っており、氷上を歩いても肉球が凍らない
- 耳が小さく、四肢や鼻から口にかけての部分が短いため、体表面積が減り、熱の放出を抑えることができる
これらの高い防寒性をもつため、ホッキョクギツネは-80℃の環境にも耐えることができるといわれている。
ホッキョクギツネは、レミングやホッキョクウサギ、ツンドラハタネズミ、ライチョウ、魚や貝、果実など様々な物を食べる。
ホッキョクグマの後をついていき、ホッキョクグマが食べ残した、アザラシやセイウチ、クジラ、トナカイなどの死肉を食べることもある。
天敵は、ホッキョクグマやオオカミ、アカギツネ。
比較的暖かい地域では、アカギツネと生息域が重なって競合関係になり、アカギツネのほうが体格が一回り大きいため負けてしまう。さらにアカギツネにホッキョクギツネの子供が捕食されて、生息数が減少している地域もある。

フェネックギツネ
北アフリカの砂漠地帯に生息している。
体長は35cm~40cm、体重は1.3~1.7kg。
大きな耳が特徴で、体温調節のために耳から放熱することができる。
上記のホッキョクギツネとは対照的な特徴をもつ。
フェネックギツネの詳細は別記事の、フェネックのかわいさ満載!生態と飼育方法を解説で紹介している。

チベットスナギツネ
インド、中国、ネパールの標高2,500~5,200mの乾燥した地域に生息している。
被毛は、背面が黄褐色、側面は銀色で、頭部は灰色で、腹部と尾の先端は白色。
体長は50~70cm、体重は3~6kg。
頭部は大きくて四角く、切れ長の目や鼻、口が中央にまとまっていて、人間味あふれる何とも言えない表情をしている。目が細くて小さいのは、砂埃から目を保護するためといわれている。
ケープギツネ
アフリカ南部の乾燥地帯に生息している。
被毛は、背面は灰色に一部黒色が混じる、頭部は赤橙色で、尾の先端は白色。
体長は約55cm、体重は2.5~4.5kg。
フェネックギツネと同様に大きな耳を持ち、体温調節のために耳から放熱する。
オグロスナギツネ
アフリカ西部の乾燥地帯に生息している。
被毛は黄褐色または灰色。
尾の先端が黒色であることが名前の由来。
体長は約40~50cm、体重は1.5~4kg。
オジロスナギツネ
アフリカや中東の乾燥地帯に生息している。
被毛は灰色で、背面の毛先が黒色。
尾の先端が白色であることが名前の由来。
体長は約40~52cm、体重は1~4kg。
大きな耳を持ち、体温調節のために耳から放熱する。
フェネックギツネに似た姿をしているが、オジロスナギツネのほうが体が大きく、尾が白い。

キツネは、高度な適応力を備えているため、現在世界中の様々な地域に生息することが出来ています。
その反面、野性下では生存競争の激しさから比較的寿命が短く、場所によっては駆除の対象になることもあり、厳しい環境の中で生きている個体もいます。
どのような環境でも、賢さと逞しさを武器にして生き抜くキツネのように、人間も現実社会の中を強かに生きていけたら素敵ですね。